私は卒後12年目で開業して約2年の消化器内科医です。現在第2子を出産し2か月が経過したところです。
第1子は勤務医時代に出産し、第2子の妊娠が発覚したのは開業して1年が経過した頃でした。夫は元々会社員でしたが、開業を機に退職しクリニックの事務長となり、2人で協力しながら仕事・子育てをしていました。
記事作成日:2024年11月15日
※この体験談は、執筆者の先生ご自身の思いや感情を、できる限りそのまま表現いただき、私たちもそれを尊重いたしております。表現、用語などは誤解のないように配慮いただいておりますが、お気づきの点がありましたらご意見いただければ幸いです。
私は卒後12年目で開業して約2年の消化器内科医です。現在第2子を出産し2か月が経過したところです。
第1子は勤務医時代に出産し、第2子の妊娠が発覚したのは開業して1年が経過した頃でした。夫は元々会社員でしたが、開業を機に退職しクリニックの事務長となり、2人で協力しながら仕事・子育てをしていました。
第1子の妊娠時つわりは軽度でしたが、勤務医でしたので、オンコールや当直も当然あり、当直明けも夜まで働くのが通常(現在は当直明けは基本帰宅)であり、その影響か切迫流産で入退院を繰り返しました。
14週でもうすぐ安定期という時に勤務中に大出血となり内視鏡室から産婦人科外来へ運ばれ、1ヶ月絶対安静となった時にはもうダメかと覚悟しました。
妊娠するまではどれだけ体力的にしんどくても、眠たくても、弱音を吐かず頑張って働いていましたが、妊娠というのはそのような根性論ではなく、身体をいたわるということや無理をしないということがどれだけ大切かということを、身をもって実感しました。
ついつい私の性格上、「大丈夫です、やります。」と仕事を引き受けてしまいがちだったのですが、これも後々になると結果的に周囲に迷惑をかけてしまうことになるので、きちんと自分の体調を考え、上司と相談すればよかったと思いました。
大丈夫といわれると上司もそれ以上の言葉を返せないと思うので、これはできるけどこれは難しいかもしれないなど、きちんと事前に話をしておくのが大切だと思います。
私もその大出血以降は勤務内容を大幅に変更してもらい、40週で特に問題なく第1子を出産しました。
第1子出産後は産後5か月で復帰しました。復帰前に夫から事務的なことはすべて担うので今後開業してほしいという希望がありました。私は子供が2人ほしいと考えていたので、開業に関しては第2子を出産してから、と考えていたのですが、夫から「なんとかするから、開業するなら絶対に早い方がいいから」と言われ、そうなんか…とまぁ流されるような形で復帰後から開業の話がどんどん進んでいきました。ただ、夫はこの時、産休時はバイトの医師を雇えばいいと安易に考えていたようで、実際内科のクリニックではそんな簡単なものではなかったのですが…。
開業医での出産などはあまり前例が多くはないですが、前医で一緒に働いていた先輩が開業後に出産したこともあり、まぁなんとかなるだろうと、あまり考えすぎないようにしました。第2子の時も幸いつわりは軽度で、妊娠後期までは特に問題なく通常通り仕事を継続できました。
開業医は自営業で法的に決まった産休育休はないので、まずは自分が産前産後どれくらい休むのかを考えないといけません。
バイトの先生に来てもらい出産期間も診療継続という手もありますが、人材確保も難しくまた定期的に診察に来てくれる患者さんはやはり自分で診療したほうがよいと考え、妊娠8か月あたりから内視鏡検査のみバイトの先生に週に1-2回来てもらい、診察は自分で行うことにしました。
出産は予定無痛分娩にして出産予定日を決め、休診期間はあまり長くなって患者さんが離れてしまうのも心配だったため3週間とし、産前産後は10日ずつ休んで復帰することにしました。前出の先輩は2週間の休診にしたのですが、もう少し余裕をもたせての3週間としました。(実際全然余裕はないのですが)
ホームページには妊娠出産のため休業しますと公表し、休診期間の前後は内服を少し長めに出して対応しました。患者さんは皆、嫌な顔はせず、温かく対応してくれました。
できれば母乳もあげたい気持ちはありましたが、仕事が始まると時間的な拘束もあることや乳腺炎になったりするリスクも考え、ミルク中心にし、夜中のミルクに関しては体調をみながら夫と交代であげることにしました。
普段から料理や掃除洗濯などは家事代行サービスを利用していましたが、その頻度を増やすとともに、出産後は数か月間義母に家に住んでもらい、日中の赤ちゃんの面倒や家事を手伝ってもらうことにしました。義母との同居は抵抗がある方もいるかと思いますが、義母はもともと保育士で1人目の面倒もよく見てもらっており、私の仕事にも理解があったため特に問題ではありませんでした。
結果的に出産は予定より約2週間程度早まってしまい、クリニックは臨時休診、陣痛がきながら外来し、ギリギリまで仕事をして、夕方に産院へ駆け込み、その日の夜に出産するというドタバタ出産となりました。
無痛分娩に対応してもらい、体力の消耗は最小限でした。結果的に産後3週間程度は休めることになったためその点はラッキーでした(それでもなかなか体力的には大変でしたが)。今後は保育園に預けられる月齢までは日中は義母にみてもらい、それ以降は保育園も利用しながら様子を見ていく予定です。
休んでいる期間は計画休業という形になり、スタッフの給料は休業手当という形で支給しました(平均賃金日額×65%×休業日数)。また病理結果や採血結果などで急を要するケースは電話診療をし、産院から紹介状なども作成して夫に対応してもらいました。またかかりつけの患者さんの緊急時は、もともとクリニックにある緊急用の携帯電話の番号へかけて頂くように案内し、夫が窓口となり対応してもらいました。
3週間後、クリニック再開時は私もスタッフも久しぶりの仕事でありバタバタとしましたが、患者さんも事前に状況などお伝えしていたため、そこまで大きなトラブルもありませんでした。
子育てはもちろん一人では無理ですし、家族や家事代行サービスなど周囲の力を借りないと不可能です。私は幸い夫や義母の協力が得られる恵まれた環境ですが、そうでない方もたくさんおられると思います。
個人的には産むのも育てるのも女性だけに負担がかかるのはおかしいと思うのですが、現実問題として家族の協力が得られない時はベビーシッターや家事代行サービスなど利用できるものは利用して負担を分散させながら仕事をしていくしかないのかなと思います。
そうは言っても私も周囲に頼って自分自身が子育てできていないという罪悪感や自己嫌悪など感じることはありますが、そう思って子育てするよりも周囲に感謝しながら楽しく働くほうがきっと子供にもいいと思い、自分に言い聞かせながら仕事を続けています。正解もありませんし、これでいいのかと自問自答の毎日ですが…。
私の場合はいろいろと特殊なケースかと思いますが、このような例もあるということで皆様の参考になればと思います。