記事作成日:2022年6月16日

1なぜ、この企画なのか?

性別や背景に関わりなく、医師が仕事とプライベートの両方において充実した人生を送るべく、働き方改革がすすめられています。しかし、そのような社会の流れにもかかわらず、女性医師の働きにくさは多くの職場において、まだ解決されていません。特に、妊娠・出産・子育てのステージにおいて、キャリアの継続が困難となる場面が、まだ皆さんの身の回りでしばしば起こっていないでしょうか。

性別に関わらず、多くの医師がプライベートを犠牲にして仕事に打ち込むか、キャリアを諦めるか、といった極端な選択を迫られています。令和の時代にあって、本来はもっと多様な選択肢があって良いはずなのに、そのような働きかた、プライベートのありかた、生きかたを認め合う価値観が共有されているとは言い難く、医師の世界全体の感覚や制度が追いついていない現状があります。

さらに、妊娠、子育て世代と、そうでない世代、そうでない生き方を選択した医師たちとの間にしばしば分断が生じていることにも、意識を向けたいと思います。知識不足が、相互理解を妨げている可能性もあります。私たち医師同士がそれぞれの立場を理解することで、壁がなくなり、互いに気持ち良く仕事ができ、より力を発揮できる医療社会の構築に貢献できるかもしれません。

自身やパートナーの妊娠・出産を「考えたとき」から、自分たちにいったいどのような選択肢があるのか、適切な情報を入手することは容易とはいいがたく、この企画は、その手助けをするものです。さらには、妊娠可能年齢の世代を部下、同僚、上司に持つ全ての医師にご覧いただき、令和時代の多様な価値観に、意識をアップデートする一助としてもらえたら、こんなに嬉しいことはありません。

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2なぜ、医師会が妊娠・出産について考えるのか?

女性医師の働きにくさは、上司世代にとっての「女性医師の扱いにくさ」と、合わせ鏡になっているかもしれません。マネジメントをされる方々が、チームの一人ひとりの医師人生がより良いものになるよう配慮されることで、仕事へのモチベーションが上がり、チームや組織のパフォーマンスが上がることが期待されます。これは経営的な視点からも非常に有意義なことではないでしょうか。

結婚などに伴う居住地域の変更や出産、育児、介護などで一時的に職務を離れた医師が職務に復帰する方法、柔軟な働き方・多様性を認めるアイデアは実働医師数を増やし、絶対的な医師不足と医師の過重労働を解決する一助となります。

京都府医師会は、すべての医師が公私ともに輝けるようにお手伝いをしたいと思っています。このマニュアルは、その思いのひとつの形として作成するものです。

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この企画は、京都府内に勤務する4名の医師が構成を考えました。テーマ毎に、それぞれの領域の専門家や、経験者に執筆を依頼し、「妊娠に際し職場のみんなで読むマニュアル」を作成します。

また今回、京都府医師会の一企画として、妊娠・出産をテーマにとりあげますが、「妊娠・出産」は必ずしもすべての人にとっての目標ではない、ということも大切なポイントです。多様な価値観、生き方を認め合う社会を目標と考えるなかで、この企画が、生きづらさを抱える誰かのためになれば、という視点を、ぜひご理解いただきたいと思います。表現、用語などは可能な限り誤解のないように配慮していますが、お気づきの点があれば、ぜひご指摘ください。

さいごに、この企画に参加してくださる仲間を募集しています。上司・同僚の立場から、実際に妊娠・出産・子育てを経験された立場から、今後妊娠を考えておられる立場からなど、様々な方のお困りごと、ご質問、実体験をもとに、双方向型の企画にしたいと考えています。関わってくださる方のバックグラウンドや経験は多様であることが望ましいと思っています。面白そうだな、と思ってくださったかたは、以下、お問い合わせより御連絡をお願いします。

お問い合わせ(京都府医師会総務課)

京都府医師会 医師のワークライフバランス委員会 委員 衛藤美穂

京都府立医科大学 内分泌・糖尿病・代謝内科 牛込恵美

京都大学医学部附属病院 医療安全管理部 加藤果林

京都府医師会 理事 堀田祐馬

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