記事作成日:2024年2月1日

※この体験談は、執筆者の先生ご自身の思いや感情を、できる限りそのまま表現いただき、私たちもそれを尊重いたしております。表現、用語などは誤解のないように配慮いただいておりますが、お気づきの点がありましたらご意見いただければ幸いです。

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よつば会クリニック京都院 院長 張 財源
卒後17年目 
皮膚科医

育児休業(以下、育休)を取得した男性医師という当時はまだ珍しい体験をした人ということで執筆の依頼をうけました。
正直に申しますと、男性が育休を取るという発想は、私も最初からあった訳ではありません。育児がどんなに大変かも知りませんでした。そもそも家事をほとんどしていませんでした(たまに気が向いたら料理と掃除はするくらいでしょうか)。そんな自分が結婚と育児を経て、俗に言うイクメンに、多分?なれたという話になります。

私が育休取得したのはもう7年前のことになります。たったの1ヶ月という短い期間でしたが、それはとても貴重な体験でした。
今や当時の記憶がかなり曖昧になっていて、妻と自分の記憶がところどころ食い違っていたりして原稿を書くのも苦労しました。私の育休取得は、上司の理解に加えて、自分のキャリアや勤務地的な要素、そして何より妻の後押しがあり実現したものでした。
正直、好条件が重なってくれたので運よく育休を取得できたと思っています(逆境を乗り越えて勝ち取った育休ではないので、この場で体験談を語るのはいささか恐縮ではありますが・・・)。

さて、育休取得時の我が家の家族構成を紹介します。
妻と私と長男の三人家族です。私は当時大学病院勤務の皮膚科専攻医の8年目でした。医局内では後輩の教育を担い、大概の仕事を一人で行えるレベルにはなっていました。妻も皮膚科医で、産休前には総合病院で常勤医としてバリバリ働いていました。仕事が好きな人なので、育休短めで早期の職場復帰を目指していました。
2015年5月に長男を出産し、2016年1月で育休が終了する予定だったので、妻と私が育休を交代して取得する「バトンタッチ型」というものでした。勤務していた大学病院では、男性医師が育休を取得した例が無いという状況でした。ですので、自分自身思いもよらなかったのですが、妻から育休を取ることを提案され初めて育休のことを考えました。
早速、労務担当の方の説明を聞いて初めて育休制度の詳細を知ったのです。私だけでなく、少なくとも同世代の多くの男性は育休制度を知らないのではないでしょうか。その後、教授のご理解もあり無事に許可をいただき育休を取得したのです。
当時の心境としては「同僚達に申し訳ないな」という後ろめたさを感じつつも、「1ヶ月、仕事を休める。やったー」という浮かれた気持ちもありました。後に育休はそんなに甘いものではなかったなと痛感することになるのです。

長男は当時生後8ヶ月だったのでおむつ替え、寝かしつけ、着替えは当然行いました。これだけなら余裕です。100%母乳育児だったので、妻の勤務する病院が近かったこともあり、1日も休まず妻の元に赴き、母乳を飲ませられるよう環境を整えました。予防接種や、発熱で小児科に通ったりもしました。
だけど育休って育児だけじゃないんです。家事も全部しないといけないんです。これは育休が始まって知りました。普段あまりしていなかった掃除、洗濯、料理までを全部こなしつつ、育児するのは大変でした。
しかしながら、この時の経験こそが現在も妻と家事を分担することにつながり、役立つことになりました。男性が育休を取得することは、育休時の子育てや家事を担うことのみならず、育休後に大きなメリットを生むと感じます。

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夫婦ともに育休が終われば、いよいよ仕事と子育ての両立をするために夫婦二人で子を育てる「共育て」を考えないといけません。そこで女性だけに家事を頼っていたのでは、「共育て」はできません。
今、我が家は家族も増えて、長男も小学校に入りました。7年前に比べて仕事も悩みも増えました。夫婦二人だけではキャパオーバーです。ハウスキーパーを雇い、お掃除ロボットも駆使して何とかやりくりしています。「共育て」精神がないと到底やっていけません。

男性が育休を取れば、結果的に女性の社会進出に貢献、少子化問題の解消につながる、などという大それた話はしません。育休知識ゼロで家事も育児も経験無し男がそこそこ家事をできるようになり夫婦円満、家庭円満で、育児を頑張っている同僚や後輩の大変さが理解できるようにもなりました。
子どもが今もよくなついてくれているのも些細なことかもしれませんが喜びの一つです。

息子が家庭を持ち子育てする頃には、男性が後ろめたさを感じることなく、育休をとることができる社会になっていてほしいものです。

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