記事作成日:2024年2月1日

男性医師が利用可能な育休制度

我が国において共働き世代は増え続けています。夫の家事・育児へのかかわる時間が長いほど出産後の妻の就業継続率が高いことが報告されていますが(1)、令和3年の男性における育児休業取得率は図1に示すように約14%と低く(2)、2025年までの目標である50%には大きな乖離があります。男性医師における育児休業取得率の明らかなデータは公表されておりませんが、職業の特性をふまえると一般男性より低いと予想されます。
男性が育児休業を取得するにあたっての一般的な課題としては、社会全体の認識、職場・上司の理解、賃金保障・キャリア形成上の課題だけでなく、当人の意識や前例がないことなども課題としてあげられています(3)。そこで、ここでは子どもが生まれたときに利用できる男性の育休制度の具体的な内容や取得要件等の概要(2023年5月1日現在)について簡潔に解説します。詳細については別添資料を参照ください。

【図1】

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「令和3年度雇用均等基本調査」厚生労働省

1『産後パパ育休』と『育児休業』

2022年10月1日に育児・介護休業法が改正されたことにより、男性が利用できる育休制度には『産後パパ育休』と『育児休業』の二つの制度があります。

『産後パパ育休』のポイント

  • ・対象期間は、子どもの出生日から8週間以内の期間
  • ・8週間の間に、合計28日まで2回まで分割して休業することが可能
    (28日間まとめて取得することも可能)
  • ・申請期限は原則休業の2週間前まで
  • ・労使協定を締結すると、産後パパ育休中に就労可能

『育児休業』のポイント

  • ・対象期間は、子どもの出生日から1歳までの期間(上限日数なし)
    (産後パパ育休を取得した場合は子どもの出生の57日目から取得)
  • ・2回に分けて取得することが可能
  • ・妻と取得期間が重なってもよい
  • ・保育園に入所できない等の理由があれば2歳まで延長可能
  • ・育休延長開始日が選択可能であり、夫婦交代で育休を取得することが可能
  • ・申請期限は原則休業の1か月前まで
  • ・原則育児休業中の就労は不可

『産後パパ育休』と『育児休業』の具体例(図2の例1、例2)

『産後パパ育休』

子どもがうまれたタイミングで1週間取得し、その後、妻が実家から戻ってくるタイミングで2週間取得します。合計28日以内、2回まで分割して取得可能です。

『育児休業』

妻の就業復帰にあわせて、夫婦で交代して取得することも、同時に取得することも可能です。また、保育所に入所できない等の場合に最長で子どもが2歳になるまで延長可能ですが、その際の開始時点は自由に選択することが可能となっています。

【図2】

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「育児・介護休業法改正ポイントのご案内」厚生労働省

育児休業等を理由とする不利益取り扱いの禁止・ハラスメント防止

育児休業等の申し出・取得を理由に、事業主が被雇用者に対して不利益な取り扱いを行うことは禁止されています。事業主には、上司や同僚からのハラスメントを防止する措置を講じることが義務付けられています。

2有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件と専門医制度にまつわる問題点

現在の制度では有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件として、『1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでない』ことが要件として定められています。
ゆえに専門医制度において、専攻医が1-2年ごとに職場を異動するような場合には育休を取得できないことが問題となっており、今後の制度の改善が期待されます。

3雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置の義務化

育児休業を取得しやすい雇用環境の整備として、事業者は以下のいずれかの措置を講じなければなりません(複数の措置を講じることが望ましい)。

  • ・育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
  • ・育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備(相談窓口の設置)
  • ・自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供
  • ・自社の労働者の育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知

*妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置として、事業主は以下の事項の 周知と休業の取得意向の確認を、個別に行わなければなりません。

  • ・育児休業・産後パパ育休に関する制度
  • ・育児休業・産後パパ育休の申し出先
  • ・育児休業給付に関すること
  • ・労働者が育児休業・産後パパ育休期間について負担すべき社会保険料の取り扱い

4育児休業取得状況の公表の義務化

従業員数1,000人超の企業は、育児休業等の取得の状況を年1回公表することが義務付けられています。

参考検討
(1):厚生労働省 第14回21世紀成年者縦断調査
(2):厚生労働省 「令和3年度雇用均等基本調査」
(3):東京都産業労働局 令和3年度「女性活躍推進法への対応等企業における男女雇用管理に関する調査」

京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・代謝内科学 岡田 博史
・卒後20年目
・専門は内分泌・代謝内科

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