※この体験談は、執筆者の先生ご自身の思いや感情を、できる限りそのまま表現いただき、私たちもそれを尊重いたしております。表現、用語などは誤解のないように配慮いただいておりますが、お気づきの点がありましたらご意見いただければ幸いです。
『ワーキングマザー 三種の神器』という言葉があり一般的には、ルンバ(ロボット掃除機)・食洗機・洗濯乾燥機を指すのですが、私としては、それら以上にエッセンシャルな存在として、「病児保育サービス」を挙げたいと思います。
親となった医師が復職する際の重要度としては「保育園」や「スマホ」などと同ランクにカテゴライズしたいほど、必須と感じています。
しかし、私も、最初から「病児保育はスマホと同じくらい必要不可欠」と思っていたわけではありません。
第1子だけの時は、子供の体調不良時には
- ① 私が休んで自宅で保育
- ② 私の実母に来てもらう
- ③ (1歳まで)病児OKの預かり型ベビーシッターサービス
- ③ (満1歳〜)勤務先病院の病児保育室
- ④ 自治体の病後児保育室
の順で対応していました。
これを、第2子の復職時から
- ① 訪問型病児保育サービス
- ② 私が自宅で保育
- (② 夫が自宅で保育(大学院期間))
- ④ 実母に来てもらう
の順に変更しました。
この順序を入れ替えたことで人生が変わるほどQOLが向上したので、訪問型病児保育サービスの良さについて、お伝えしたいと思います。
訪問型病児保育サービスのすごいところ
① 病児慣れしたシッターさん
病児保育には、何をおいても安全が最重要です。仕事が好きで大切だからって、勤務に穴を開けたくないからって、子供はどうなってもいいなどと、思っているわけではないのです。(涙)
私の利用している訪問型病児保育サービスは
- ・普段から専門的に病児をみているシッターさん
- ・とてもマニュアルがしっかりしている感じがする
- ・頼めば小児科受診も代行してくれる
- ・バックに医療機関があって、場合によっては訪問診療もしてくれる
と、非常に安心感のある体制です。
病児保育サービスを利用した日は、昼過ぎに途中経過報告(子供の様子)のメールが送られてくるほか、夕方、家に帰ると写真のような経過報告を渡されます。
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初めてこの経過報告書を見た時は、本当に感動しました。5分おきの呼吸チェックなど、まるで麻酔記録のようで、自分で看病するより安全かもしれないとさえ感じました。
時には、ベテランさんと新人さんのペアで現れることもあり(前もって承諾済み)、それはそれで、安心感があります。
教習所の車には、教官が同乗するし、研修医には、指導医がついて診療を行う、そのように、次世代の人材を育成するシステムがあってほしいと思います。
訪問型病児保育サービスのすごいところ
② とにかく家に来てくれる
「病児保育施設に行く」のではなく「病児保育が来る」。これらがどれほど違うものか、私も実際に試してみるまで分かっていませんでした。
親のメリット① 体調不良の子を連れて移動しなくていい
病児保育施設に預けて出勤となると、必然的に早朝から準備が必要です。熱のある子供を無理に起こして、何とか励まして着替えさせ、混雑する朝の通勤時間帯に、連れて移動するのは大変な困難です。
猛暑や極寒の日はストレス3倍。雨だとストレス5倍です。
親のメリット② 荷づくり不要
預かり型の病児保育は、お弁当や哺乳瓶、着替え複数組、タオル、おむつ、おしりふき、母子手帳に薬に、場合によってはおもちゃや絵本(もちろん全て記名が必要)まで、大量の荷物を持参する必要があります。
帰りは汚れ物の持ち帰りがプラスされて、さらに重くなります。子供の荷物と自分の荷物を担いだ上に、体調不良で不機嫌な子供を抱っこして帰ることになります。
親のメリット③ 出勤できる時刻が確定する
預かり型病児保育の場合、まず朝早く出て→預かり施設まで連れて行って→保育者に申し送り→場合によっては受診→バイバイして→職場まで移動、という過程を踏む必要があります。
工程が多いため、時間が読みにくく、職場に何時に出勤できるのか、事前に申告するのが難しい部分があります。
訪問型病児保育の場合、8時(5分前)に保育者が来宅し、申し送り→バイバイ→8時出発で出勤、というプロセスだけなので、職場に到着する時刻を、前日から伝えることができます。
些細なことのようですが、これは働く者にとって、どれほど大きな差であることでしょう。
小児科の待合室で、診察を待ちながら、時計を見ては
「あぁ、これいったい何時になるんだろう、朝一番に来たはずなのに。職場からだいたいの到着時刻を言えって言われても、それが分からないんだよね…やっぱり子供がいると使いにくいって思われそうだな……っていうか自分でもそう思うわ、あぁ、もう行きたくない、辛い…」
と思い続けるのと、
「すみません!子供が熱を出したので、9時着になります!!9時からしっかり働きますので!毎度すみません!!!」
と言い切れるのと、精神的負担が全然違うのです。
親のメリット④ 帰りに迎えに行かなくていい
預かり型保育の場合、子供が熱にうなされて、夜中じゅう何度も泣いて起きて、時には嘔吐して、その度にこちらも起きて対応して、朝もぐずる子供の相手をしながら、託児の準備をして、出勤準備もして(大体自分の朝食なんて食べてる場合じゃなくて)、やっとのことで預けて、低姿勢で出勤して、遅刻した分を取り戻すべく、できるかぎり働いて、ダッシュで退勤して、病児保育施設にお迎えに行って、子供が騒がないように機嫌を取りながら電車で連れて帰って、ご飯を食べさせて、なんとか宥めて寝かせて。
という日を過ごすことになります(悪いとこれが何日か連続します)。
訪問型保育の場合、通常の通勤と同様に単身帰宅できるため、上記とは比較にならないほど体力温存した状態で、夜間の看病に臨むことができます。
子供のメリット① 弱っている時に移動しなくて済む
わが子の場合ですが、通勤時間帯で電車は満員、自家用車は無し、タクシーに乗れば3分で乗り物酔い。という状況であり、移動だけでも一苦労です。
子供のメリット② 慣れた自宅でリラックスして過ごせる
体調が悪い時に、慣れない場所で、親と離れて知らない人と過ごす預かり型病児保育は、
負担だろうなと想像します。(思い返すと、上の子も、預かり型病児保育を嫌がったことはありませんでした。前日から、「楽しいところだよ」「みんな優しいよ」などと言い含めることで、ストレスなく過ごせるように心がけてはいましたが、尋常でない母の迫力を感じ取って、おとなしく従ってくれていたのかもしれません。)
慣れた自宅で休めることは、大人に置き換えて考えても、心安らげることでしょう。
子供のメリット③ 早起きしなくていい
シッターさんの到着までに、親さえ準備ができていればいいので、子供は、朝ごはんを食べている途中でも大丈夫だし、テレビを見ていてもいいし、ぐったりしている朝に、母に叩き起こされることなく、ゆっくり眠って、まだパジャマのままでも、大丈夫です。
訪問型病児保育サービスのすごいところ
③ 必ず来てくれる
私の利用しているところは、「当日8:00までの予約で、100%派遣保証」を謳っています。
実際に、病児の多い時期でも、前日15時の予約で、取れなかったことがありません。
一般的な病児保育(特に集団保育)では、インフルエンザは預かり不可なことが多いです。でも、インフルエンザは不可、溶連菌感染も不可、ノロウィルスも不可、と言われたら、…そうじゃない病気って何?ってなりませんか?
(コロナ関係は、当時「濃厚接触者でないこと」程度の制限が記されていた気がします)
RSウィルス感染の時には、何日も連続で来てもらったりしました。本当に有難かったです。
朝8時ぴったりに、インターホンが鳴り「訪問型病児保育サービスのレスキュー隊です」と名札を見せて下さるときの安心感!
母の心にとっても、それは完全にレスキューであり、温かさと頼もしさに、毎回泣きそうになります。
訪問型病児保育サービスのすごいところ
④ 夫婦円満機能
小さな子供というのは、しょっちゅう風邪をひく生き物です。
頻回にある、子供の発熱に際して、「まずは私が職場に頭を下げて休む」という対応をとっていた頃、私は、常にイライラしていました。
「自分が保育のために仕事を休むのは有り得ない」という姿勢を貫いている夫に対して。
夫のそのスタンスは、意地悪というよりは、仕事に対する責任感なのであって、それは私にも、よく理解できることでした。なぜなら、私だって仕事に対して責任感を持っているからです。持っているからこそ、苦しい思いをしていました。
急に仕事を休まなくてはいけない、かもしれない。明日も突然早退するかもしれない。職場側から見たら、責任感など無いように見えるだろう。(見えるというか、まあ、あるとは見なせないですよね)
職場で、自分が「人数に数えていいかどうか不確定な人材」と、はっきり言ってしまえば「使えない人材」と見なされていくことの絶望的な悲しさを、なぜ、共同子育て者であるはずの夫は、全く感じずに済んでいるのだろうか?同学歴、同職種、同収入なのに?
また、私の実母に頼む回数も多く(かなり頻繁に自宅に来てもらっていた)母にも申し訳なくて、でも、その心苦しさも、夫にはなさそうだった(ように見えた)。
なぜ!?
なぜ、私ばっかり??
結婚とは何でしたか、
両性の本質的平等って、確か憲法に書いてなかったですか???
暗澹たる思いでいた日々の中、病児保育サービスが、思わぬ形で、一筋の光明となったのです。
病児対応の第一選択として、シッターを利用するようになっても、夫の態度は、別に変わりませんでした。が、私の思考回路が、劇的に変化します。
「私だって仕事を休むのは有り得ないことである」と、力強く言い切れるようになったのです。
もちろん、私が有給休暇を使って看病をする日もあります。
でもそれは、(母親だから/女性だから)休業を押しつけられているわけではない。シッターさんを呼ぶという選択肢を持った上で、今回は、自分が休むことを選んでいるだけです。誇りをもって、自分の子供をケアするために。
外から見たら、些細な違いかもしれませんが、この差が、どれほど、職業人としてのプライドを守ってくれることでしょうか。これなら仕事を続けていける、というものです。
ちなみに、先ほど、夫は仕事に対する責任感があっただけと書いたのですが、今思えば、単に何も考えていなかっただけかもしれません。何も考えずに済んだのは、全てを私が考えて、手配してやりくりしていたからだと思います。
私は毎回、この病児問題が発生するたびに、はらわたが煮えくり返る思いをしていましたし、夫のことが許せず、いつか必ず仕返ししてやる、と思い続けていました。
そうすることで、自分の心を守っていました。
このような敵意を向けられていたら、夫も、妻の状況を理解するどころか、ますます頑なになるのは当然のこと。両者は睨み合い、すれ違い、こじれる一方でした。
病児保育を優先的に利用し、私が、自分に対する誇りを回復した頃から、夫も「いろいろありがとう」と、歩み寄りの言動を見せてくれるようになりました。
こうして、病児保育サービスのおかげで家庭に平和が訪れたのです。
めでたし、めでたし。
訪問型病児保育サービスのすごいところ
⑤ 値段、それによって起こること。
病児シッターサービスを利用する際に、最大のネックになるのは、価格ではないかと思います。
私の利用しているサービスも、
・入会金3万円
・月会費5000円〜1万円程度(依頼回数によって変動)
(月会費には月1回分の保育料が含まれているので、毎月1回は無料で利用可)
と、安くはない値段です。
(上記のサービスを考えたら、実に適正というか、全然高くないとも言えるのですが、
私も最初は高いなと感じていました。)
しかし、病児保育サービスが高額であるという、そのこと自体によって思いもしなかったコペルニクス的転回が起きたのです。
病児保育サービスが高額であるという事実により「病児の保育は、高いコストを伴う、家庭全体の事案である」という発想が、家の中で生まれます。
すると、例えば、私が仕事を休んで看病をするという時は、
=病児保育サービスを頼まない(その分の費用がかからない)
=その費用を、私が実働で賄っている
ということになります。
つまり、病児保育が高額であればあるほど、「病児を家庭保育している私の時給も高い」という計算になるのです。
「仕事を休んで、無償労働をしている」と思うとイライラするのに、「仕事を休んで、高時給のバイトをしている」と思うと、ちょっといい気分になる不思議。
看病というのは、非常にストレスの多い業務です。機嫌の悪い小児の相手をすること、
重症化の兆候を見逃さないこと、他の家族への感染防御、もちろん自分も感染のリスクもあり、十分に眠れない日々、場合によっては汚れたシーツや服の漂白や洗濯。何よりも、自分の子が辛そうにしているというだけで精神的に辛い。
このように、看病生活がハードだったとしても「そりゃそうだ、こんなに時給が高いんだから」と思えて、辛さが和らぐのです。
これは、予想していなかった発想の転換でした。
◉訪問型病児保育サービスのデメリット
コストが高いという、唯一の弱点が上記で解決されてしまったので、デメリットは特に思いつきません。
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以上です。
子供の健やかな成長を、家庭の平和を、私の心の平穏をもたらしてくれた病児保育サービスには、感謝でいっぱいです。
こちらで紹介する機会をいただけて、大変うれしく思いますし、今後とも、全国で同様のサービスが利用できるようになることを願ってやみません。